

御社の事業内容を教えていただけますでしょうか。
当社はドイツに本社を置く国際的な第三者試験・認証機関です。テクノロジーの進化とともに高まるリスクに対して、人々の「安全」と「安心」を守ることを使命としています。
「試験」「認証」「監査」「トレーニング」という4つのサービスを柱に、製品の安全性や企業活動の信頼性を確保に努めており、産業機器、医療機器、電気・電子機器、さらには消費財に至るまで、多様な業界を支えています。
社長が日本法人のトップに就任されたのはいつ頃ですか? 就任にあたり、どのような役割を託されたのでしょうか。
私が代表取締役社長に就任したのは2021年で、現在5年目を迎えています。
当社はドイツにおいて150年以上の歴史を誇る老舗の第三者認証機関であり、本国では「試験・認証といえばテュフズード」と言われるほどの認知度を得ています。一方で、日本市場は競争が非常に激しく、差別化が求められる環境です。私は、日本法人としてのブランド価値と市場での存在感をより一層高めるというミッションを託されて、このポジションに就任しました。
ちなみに、「ドイツ企業の日本法人のトップがイタリア人の私」ということで、初めてお会いする方々には驚かれることもしばしばです(笑)。
グローバル企業ならではですね(笑)。就任後、会社はどのように変化しましたか?
業績向上はもちろんですが、最も大きな変化は社員の意識改革です。これまでは新しい取り組みに対して慎重な姿勢が見られましたが、今では「変化を前向きに楽しむ」「挑戦を歓迎する」というマインドが、社員一人ひとりの中に根付き始めています。
こうした意識の変化は、私が就任当初から一貫して伝えてきたテーマのひとつなのですが、2024年にこの新しいオフィスへと移転したことも、社員の意識改革をさらに後押ししたと感じています。
移転プロジェクトでは、各部署から一人ずつ代表者が集まり、自分たちの働きやすさを徹底的に追求した最高のオフィスを企画してくれました。トップダウンではなく、社員が主体となって理想のオフィスを形にしてくれたことは、社長として非常に嬉しかったです。




社員の皆さんのチャレンジ精神は、オフィスづくりの過程でも育まれていったのですね。新オフィスの企画で重視していたのはどのような点ですか?


最も重視したのは、社員同士のコラボレーションを自然に促す空間づくりです。部署や役職を越えて気軽に交流できるよう、フロアを分断せず、柔らかくつながる空間設計にこだわりました。
これらを実現させるために考えたのが、「縁側」という日本ならではのコンセプトです。執務エリアや会議室を“家の中”、その周囲に縁側に見立てた動線を設けて、緩やかな境界をつくることで社員同士が交流しやすい空間を目指しました。
「縁側」がコンセプトなのですね。エントランスにも盆栽がありましたが、日本の文化がお好きなのですね?
はい、その通りです。オフィスづくりの主役は社員たちなので、私の意見が採用されないことも多かったのですが、盆栽だけは何としても置きたいとこだわりました。(笑)
ちなみにオフィスには緑も多いですが、それもオフィスづくりにおけるコンセプトの一環でしょうか。
そうですね。テュフズードは創業以来、サステナビリティを追求しており、オフィスづくりにも反映しています。私自身、環境工学の学位を有していることもあり、環境に配慮した空間設計に強い思い入れがあります。
生きた観葉植物の設置をはじめ、人体や環境に優しい照明設備の導入など、「持続可能性」を意識した工夫を取り入れました。
オフィスづくりを通じてサステナビリティ経営を実現されているのですね。移転先に住友不動産新宿南口ビルを選んだのは、どのような理由からですか?
最大の理由は、社員にとっての「アクセシビリティ」の高さです。社員の通勤利便性が最も高いのが新宿駅であり、加えてこのビルは駅から非常に近いので、通勤によるストレスを大幅に軽減してくれます。
また、新宿御苑などの自然と都心の街並みが共存しているロケーションも大きな魅力です。社員たちに「この素晴らしいオフィスが自分たちの職場なんだ」と誇りを持ってほしかったので、このビルを選びました。
オフィスの中で社長のお気に入りの場所はありますか?


お気に入りは、ラウンジスペースです。カフェのような雰囲気で、たびたび社員たちと他愛のない会話を楽しんでいます。自然と人が集まり、活き活きとしている姿を見ると、移転してよかったと実感します。
移転してまもなく1年ほど経つかと思いますが、社内の雰囲気や社員の皆さんに変化などは見られますか?
はい、コミュニケーションが格段に活発になったと感じています。「日本人って、こんなに話すんだ!」と、思わず笑ってしまうほどです(笑)。それにより部署間のコラボレーションが自然と生まれるようになりました。課題が発生すれば互いに知恵を出し合い、ともに取り組む、そんな動きが日常的になってきました。
また、社員がお客様にオフィスをご案内する光景もよく見かけるようになりました。さらに嬉しいことに、神宮外苑花火大会をオフィスから特等席で楽しんでいただくなど、ご家族を招いた社内イベントも開催することができています。移転を機に、このようなポジティブな変化がたくさん起こっています。
社員の皆さんが「自分たちのオフィスをつくる」という意識で自主的に取り組んだからこその成果ですね。
そうですね。社員のニーズを的確に理解し、形にすることができた結果だと思っています。これは企業が持続的に成長していくために欠かせない視点だと思います。


では最後に。御社にとって「新時代のオフィス」とは?
私が常に社員に伝えているのは、「忙しい人ではなく、“サクセスフル(成功する)な人”を目指しましょう」ということです。オフィスをご覧いただくと、社員たちがリラックスした表情でコーヒー片手に会話を楽しんでいる光景が見られます。のんびりと過ごしているように見えますが、その一方で彼らは確実に成果を上げている“成功する人たち”です。
新しいオフィス空間がこのような生産性の高い働き方を促進し、仕事も人生もより豊かなものにしていると、私は確信しています。成功を目指す人たちが集い、互いに刺激を与え合い、ともに未来を切り拓いていく場。それこそが、私たちが考える「新時代のオフィス」のあり方です。