

三菱総合研究所グループの中核IT企業である御社の事業内容を教えてください。
当社は1970年に三菱銀行(現:三菱UFJ銀行)のコンピュータ計算部門から分離独立し、金融系システム構築を強みに事業を展開してきました。2004年に三菱総合研究所グループへ移行してからは、シンクタンク・コンサルティングからITシステム構築まで一貫したサービスをご提供しています。
現在は主にどのような分野のプロジェクトを手がけていますか?
もともと強みを持っている銀行やクレジットカード会社のシステム開発はもちろん、製造・流通・電力などの産業系、官公庁などの公共系にも事業を拡大しています。また、生成AIやロボティクスなど最先端技術を活用したプロジェクトにも注力しており、多岐にわたる側面からお客さまや社会の課題解決に貢献していきたいと考えています。
今回、東京本社のオフィスを移転することになった経緯を教えていただけますか?
最も大きな目的は、働きやすい職場環境の再整備です。以前のオフィスは、階数は多かったもののワンフロア自体はコンパクトであったため、部門や共用スペースなどの機能が各フロアに分散していました。そのため社員が一堂に集まるときなどにもっと効率的にスペースを使うことができるように、ワンフロアあたりの面積がより広いオフィスへ移転したいという思いがありました。
こちらの東京三田ガーデンタワーは、そういった点で条件が合致したのですね。


そうなんです。20件ほど候補物件がありましたが、3000坪以上のフロア、各方面にアクセスしやすい山手線沿線の立地、ビルの設備や竣工タイミングなど、私たちの条件に最も合っていたのが東京三田ガーデンタワーでした。
また、ビル1階のエントランスにフラッパーゲートが設置されていることや、多目的トイレが各フロアに配置されているなど、ビル自体のセキュリティの高さやダイバーシティに対する配慮が感じられた部分も、今回オフィス移転を決めた大きな要因の一つです。
新しいオフィスのコンセプトやレイアウトは、どのように企画していったのでしょう。
2023年に移転を検討し始め、2024年4月に総務部を主体としたプロジェクトチームを立ち上げました。全社から代表者を集めて意見交換を行い、デザイン会社と一緒に細部を詰めていった形です。
コロナ禍を経て、当社では出社とテレワークのハイブリッド勤務が定着していました。今後はそれをABW(Activity Based Working)として進化させ、さらなる生産性向上やワークライフバランスの実現を目指したいという考えがありました。そのため、新しいオフィスでは仕事の内容に応じてさまざまな環境を選択可能にすることが大きなテーマでした。
また、ABWの導入にともない、「本社」を構える意味や位置づけを見直す必要も出てきます。そこで当社では、本社を「目的を持って出社する場所」と再定義し、他拠点や常駐先、在宅勤務の社員も気軽に集まってコミュニケーションが取れるようなオフィスにしたいと考えました。
なるほど、「ABW」「本社の再定義」「コミュニケーション」がオフィスづくりのキーワードだったのですね。
はい。今回、3フロアにわたる計3000坪のフロアをお借りできたので、実現したかったテーマを最大限に形にすることができました。
例えば、フロアの中央に内階段を設けて気軽に行き来できるようにしたり、その周囲を多目的スペースにして大型LEDモニタを設置したり。テレカンブースや集中エリア、座った人にだけ音が聞こえるボックス型ソファなど、仕事をする場所の選択肢も大幅に増やしました。




オフィスの中に内階段があるなんて素敵ですね! 社員の皆さんから出た意見で、実際に反映されたものはありますか?


会議室の予約システムについて、以前は予約済の状態にもかかわらず、実際には未使用であるケースが散見され、社員から不満の声がありました。そうした社員の声を踏まえ会議室が効率的に活用されるように、入室が予約時間から5分以内に確認されない場合は、自動的に予約がキャンセルされる仕組みを導入しました。
また以前のオフィスでは固定席だったのですが、今回の移転で基本的にフリーアドレスに変更となったので、企画当初はオフィスの変化に対して社員から不安の声が多く出ていました。そのため、部門ごとに執務エリアを決めたり、誰がどこにいるかわかる位置情報システムを導入したり、新しい働き方にスムーズに移行できるような工夫は取り入れましたね。やはり現場で働いている社員たちの意見は、働きやすさと直結するので非常に参考になりました。
2025年6月に移転が完了してまだ間もないですが、社員の皆さんの反応はいかがですか?
満足度はとても高いようで、テンションが上がっている様子がうかがえます。オフィス内を歩くだけでさまざまな部門の社員とすれ違うので、「何年かぶりに○○さんと会った!」という声も(笑)。意識しなくても自然とコミュニケーションが発生しているようです。
今回、社長自らの要望で役員専用の個室をなくし、オープンな役員エリアを設けたため、社員が役員と話している姿もよく見かけるようになりました。社長は今回の移転にとても力を入れていて、現在はオフィス周辺の施設や飲食店の情報を社内ブログで発信するなど、社員がこの場所をより好きになるような取り組みを行っています。
来客用の会議室もガラス張りで開放的になり、社員からは「胸を張ってお客さまをお迎えできる」という声が上がっています。お客さまや新卒内定者をオフィスにご案内した際には、広々としたフロアや内装のデザイン、東京タワーが望める景色などに、お褒めの言葉をいただくことも多いです。
移転を通じてDXなどもかなり進んだのでは?


そうですね。引っ越しの際の荷物削減では社員の積極的な協力もあり、書類の電子化などで87%の荷物削減に成功しました。複合機の台数は以前の4分の1、個人ロッカーはパソコンとカバンが入る程度の大きさに縮小して、日頃からDXや整理整頓を意識できる環境にしています。


では最後に。御社にとって「新時代のオフィス」とは?
オフィスの意義は、「オフィス自体」ではなく「そこで働く人たち」にあると考えています。社員たちが生き生きと働き、お客さまをしっかり支えて事業を盛り上げていく。そのための場であるべきだと。
オフィスのあり方は時代や状況に応じて変化していくものであり、正解や完成形はないと思っています。今回の移転は、当社の「新時代のオフィス」に向けたファーストステップですので、今後も社員の声を丁寧に聞きながらより良いオフィス環境をつくっていきたいと思います。